食道癌術後蛋白代謝に対するヒト成長ホルモン投与の効果

高木　一也, 田代　亜彦, 真島　吉也, 山森　秀夫, 西沢　正彦, 中島　伸之

千葉大学第1外科

　侵襲期蛋白代謝に対するヒト成長ホルモン（HGH）投与の効果を，食道切除術後症例において検討した．右開胸，開腹，食道切除再建術を行った術後症例13例を完全中心静脈栄養管理を行い，術後より5日間HGH 24 U/day投与したHCH群（n＝6）および非投与対照群（n＝7）の2群とした．術後第2病日より第5病日までの累積窒素平衡はHGH群で有意に良好であり，術後第3病日の全身蛋白代謝回転速度，合成速度，分解速度ともにHGH群で高く，とくに合成速度は有意に高かった．術後の尿中3-methyl histidine排泄量はHGH群で低く，とくに第6病日では有意に低かった．術後第3病日のphenylalanine，tyrosinの大腿動静脈較差より，骨格筋からの放出はHGH群は有意に低かった．HGH投与による肝機能，腎機能に与える影響は認められなかった．
　以上よりHGH投与は術後蛋白代謝の改善，骨格筋蛋白の保持の点で有用と考えられた．

索引用語
postoperative state of esophageal carcinoma, human growth hormone, nitrogen balance, whole body protein turnover, arteriovenous differences in amino acids

別刷請求先
高木　一也　〒260　千葉市中央区亥鼻1-8-1　千葉大学医学部第1外科

受理年月日
1993年1月13日

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