原著
下部胆管癌に対する幽門輪温存膵頭十二指腸切除術の適応―臨床病理学的検討―
上坂 克彦, 二村 雄次, 早川 直和, 神谷 順一, 近藤 哲, 梛野 正人, 宮地 正彦
名古屋大学第1外科
下部胆管癌に対する幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(以下PPPD)の適応を明らかにするために,教室における19切除例を対象として臨床病理学的検討を行った.胃,十二指腸への直接浸潤例は1例もなかった.リンパ節転移は7例(37%)に認め,転移部位は13a,b,12b2,14,17が中心であった.幽門側胃周囲のリンパ節No.3~7については,大動脈周囲にまで広範なリンパ節転移を有した1例にのみNo.7に転移を認めたにすぎなかった.またPPPDを施行した5例では,胃および十二指腸第1部周囲に再発した症例はなかった.一方,経皮経肝胆道鏡(PTCS)により上流側胆管への表層拡大進展を5例に認め,肝門部胆管切除を加えた.以上より,PPPDは下部胆管癌の標準的な根治手術として適応することができ,この際術前にはPTCSを行い,表層拡大進展の有無と程度にあわせて上流側胆管を十分切除する必要があることが明らかとなった.
索引用語
lower bile duct carcinoma, pylorus-preserving pancreatoduodenectomy, superficially spreading carcinoma
日消外会誌 26: 1233-1238, 1993
別刷請求先
上坂 克彦 〒464 名古屋市千種区鹿子殿1-1 愛知県がんセンター消化器外科部
受理年月日
1993年1月13日
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