症例報告
消化管出血シンチグラフィーが有用であった十二指腸憩室大量出血の1例
今井 直基, 関野 昌宏, 清水 幸雄, 細野 竜司, 後藤 全宏, 田辺 博, 藤井 淳*
岐阜県厚生連総合病院養老中央病院外科, 同 内科*
患者は48歳の女性で,吐下血を主訴として当院を受診した.RBC 246×104/mm,Hb7.3 g/dl,Ht22.1%と貧血を認めた.上部消化管内視鏡では食道から十二指腸乳頭部までに出血源を認めなかった.消化管出血シンチグラムでは右腎内側に集積像を認めた.動脈造影を予定したが,ショック状態となったため,緊急手術を施行した.開腹すると下十二指腸曲後壁に緊満しthriiを触知する径4 cmの憩室があり,これを切除したところ血圧は上昇した.憩室は真性憩室であり,その底部には周囲がやや隆起した浅い漬瘍と,細い1条の血管がありここからの出血と判断した.十二指腸憩室から大量出血することは非常にまれであり,本邦報告例は21例にすぎない.術式は憩室切除のみの11例と,胃切除を追加した7例にわけられたが,憩室切除のみで再出血をきたした報告はなかった.ショック状態における緊急手術となりやすい本疾患に対し胃切除はすべきではないと考えられた.
索引用語
massive hemorrhage from duodenal diverticulm, diagnostic usefulness of scintigram for gastrointestinal bleeding, excision of duodenal diverticulm without gastrectomy
日消外会誌 26: 1266-1270, 1993
別刷請求先
今井 直基 〒503-13 養老郡養老町押越986 岐阜県厚生連総合病院養老中央病院外科
受理年月日
1993年1月13日
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