肝細胞癌切除後に孤立性腹腔内転移をきたした2症例

上田　幹子, 滝　吉郎, 高安　隆, 猪飼　伊和夫, 亥埜　恵一, 森　敬一郎, 嶌原　康行, 山岡　義生, 小澤　和恵, 大和　俊雄^＊, 和田　和代史^＊＊

京都大学第2外科, 国立京都病院^＊, 和田病院^＊＊

　肝細胞癌切除後に腹腔内に孤立性腫瘍として再発した2症例を経験したので報告する．
　症例1は，硬変併存肝細胞癌の絶対治癒切除術2年後よりα-fetoprotein値が上昇し残肝内多発転移を認め，肝動脈塞栓術を施行した．その後AFP値は一過性に低下したが再び急上昇し，さらに右季肋部に腫瘤を触知したため，開腹により大網内に存在した小児頭大腫瘤（13×10×10 cm）を切除した．症例2は，肝細胞癌破裂に対する外側区域切除術2年半後よりAFP値が上昇し右下腹部に腫瘤を触知したため，開腹により結合織内腫瘤（4.5×4.5×3.5 cm）を右半結腸および腹壁と共に切除した．いずれも組織学的に肝細胞癌と診断され，術後AFP値は急激に低下した．症例1は初回手術より4年3か月後，症例2は4年8か月後，いずれも全肝再発による肝不全で死亡した．肝細胞癌においてまれな再発様式である腹腔内腫瘍として再発した症例を経験したので報告した．

索引用語
hepatocellular carcinoma, metastatic intraabdominal tumor

別刷請求先
上田　幹子　〒606　京都市左京区聖護院川原町54　京都大学医学部第2外科

受理年月日
1992年11月11日

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