症例報告
高度のA-Pシャントを伴った肝細胞癌自然破裂の1治験例
水上 泰延, 長嶋 孝昌, 生田 宏次, 岩谷 信行, 三宅 秀夫, 北 雄介, 鈴木 憲次, 伊藤 靖, 鈴木 重世
遠州総合病院外科
原発性肝癌の腹腔内破裂の予後は不良で,半年以内に死亡する症例がほとんどである.われわれは高度のA-Pシャントを伴った肝硬変併存肝癌破裂例に対して自然止血後肝切除術を施行し,術後4年の現在再発の兆候なく,健在な症例を経験したので報告する.
患者は33歳の女性.既往歴として22歳時B型肝炎罹患.腹部膨満感が増強し,他院にて肝硬変合併の肝癌破裂と診断され,当院に紹介された.腹部血管造影ではS6に腫瘍濃染像と高度なA-Pシャントにて門脈を逆流し,怒張した冠状静脈が造影された.Indocyanine green(ICG)15分停滞率(R15)41.1%と高度の肝硬変を合併しており,肝右後区域切除術を施行した.腫瘍は被膜形成,被膜浸潤を認めず,右門脈後枝に腫瘍栓を認めた.
肝癌破裂の治療としては肝動脈塞栓術(TAE)にて止血を行うか,本例のように自然止血後十分に肝予備能を評価したうえで適切な術式を選択することが大切と思われた.
索引用語
hepatoma, spontaneous rupture, A-P shunting
日消外会誌 26: 1276-1280, 1993
別刷請求先
水上 泰延 〒430 浜松市常盤町144-6 遠州総合病院外科
受理年月日
1993年1月13日
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