症例報告
門脈ガス血症を呈した急性腹症の3例
坂本 喜彦, 福井 洋, 鶴長 泰隆, 塩竃 利昭, 水谷 明正, 藤本 正博
長崎記念病院外科
門脈ガス血症は種々の消化器疾患に併発して出現する予後不良のまれな病態である.急性腹症に併発した成人門脈ガス血症を8か月間に3例経験し,いずれも早期手術で救命できた.症例1は19歳の男性.急性虫垂炎,汎発性腹膜炎で肝のほぼ全区域辺縁に高度の門脈ガスが認められた.症例2は69歳の女性.虚血性大腸炎で肝内側区域に門脈ガスを認めた.症例3は73歳の女性.絞扼性イレウスで回腸が1 mにわたり絞扼されていた.肝右葉に門脈ガスを認めた.いずれの症例も門脈ガスは腹部単純X線写真では認められず,腹部超音波検査・computed tomographyで描出が可能で,その早期診断にはこれらが有用であった.また,われわれの症例では術後,門脈ガスが消失しており,術後早期にガスが消失する症例は予後良好と思われた.また本邦報告例25例の集計では,死亡率56.0%で,壊死腸管を有する症例,あるいはガスが肝外門脈系にまで及ぶ症例は予後不良であった.
索引用語
portal venous gas with acute abdomen
日消外会誌 26: 1305-1309, 1993
別刷請求先
坂本 喜彦 〒852 長崎市坂本町7-1 長崎大学医学部第2外科
受理年月日
1993年1月13日
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