原著
迷走神経切離の胆嚢機能におよぼす影響
谷村 雅一
大阪医科大学一般・消化器外科(指導:岡島邦雄教授)
胃癌手術後胆石症の成因として迷走神経切離(以下迷切)による胆嚢機能障害が重要視されている.本研究では迷切の胆嚢機能におよばす影響を明らかにする目的で教室例を対象とした臨床研究およびモルモットを用いた実験的検討を行った.その結果,臨床研究では全幹迷切となる胃全摘あるいは胃亜全摘と第3群リンパ節郭清を伴う術式を行った場合,術後の食餌刺激による胆嚢収締能は著明に障害され結石形成に促進的に作用すると考えられた.一方,迷走神経温存術式では術後の胆嚢縮能はよく保たれており神経支配温存の重要性が確認された.動物実験ではモルモットに迷切を行うと,8週後に27.5%の頻度で胆嚢内に結石様物質の形成を認めた.胆嚢運動の調節機構の検討では食餌刺激後の胆嚢収縮は主に迷走神経を介した運動と考えられた.さらに迷切モデルにおいて食餌刺激後の胆嚢の律動性収縮の低下を観察し,結石形成との関連を推察した.
索引用語
post gastrectomy cholelithiasis, vagotomy, gallbladder function, clolecystokinin, vagus-preserving gastrectomy
日消外会誌 26: 1365-1373, 1993
別刷請求先
谷村 雅一 〒569 高槻市大学町2-7 大阪医科大学一般・消化器外科
受理年月日
1993年3月19日
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