原著
手術侵襲に対する腸管の反応―アミノ酸とサイトカインの動態―
藤田 哲二, 尾高 真, 松本 美和子, 桜井 健司
東京慈恵会医科大学第1外科
侵襲に対する腸管の反応が近年注目を集めている.手術侵襲時に腸管を巡るアミノ酸およびサイトカインの動態を究明するために,消化器外科手術患者24例を対象として手術開始約2時間後に門脈血および末梢静脈血を同時に採取し,それぞれのアミノ酸,サイトカイン,インスリンおよびグルカゴン濃度を測定した.
グルタミン(Gln)を除く19種類のアミノ酸については門脈一末梢血間に有意な濃度差はみられなかった.門脈血Gln濃度は371.06±97.01 nmol/ml(mean±SD)であり,末梢血Gln濃度452.38±80.29 nmol/mlに比べて有意に(p<0.02)低かった.末梢血Gln濃度と門脈血interleukin 6濃度との間には有意な負の相関(r=-0.46,p<0.05)が認められた.また門脈血Gin濃度と末梢血グルカゴン/インスリン比の間には有意な負の相関(r=-0.46,p<0.05)があった.
侵襲時の血管内から腸管粘膜上皮へのGlnの移行にはサイトカインの関与が考えられる.
索引用語
portal-peripheral venous differences in amino acids level, relationship between plasma glutamine concentration and portal cytokine level
日消外会誌 26: 2020-2025, 1993
別刷請求先
藤田 哲二 〒105 港区西新橋3-25-8 東京慈恵会医科大学第1外科
受理年月日
1993年1月13日
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