症例報告
胃外発育型胃癌の1例
小坂 篤, 中川 俊一, 田中 穣, 鈴木 秀郎, 梅田 一清
松阪市民病院外科
胃癌の発育形態として比較的まれな胃外発育型胃癌の1例を報告し,さらに本邦報告例65例に自験例を加え検討した.症例は64歳の男性.左上腹部痛と腫瘤を主訴に来院した.左上腹部に6×3 cm大の圧痛を有する腫瘤がみられ,超音波やCT検査にて胃小彎側に接する腫瘤を認めた.上部消化管造影X線検査,胃内視鏡下生検にて腺癌と診断された.術前胃外発育型胃癌と診断し手術を施行した.術中所見では胃小彎側に小児手拳大の腫瘤がみられたが,周囲臓器への浸潤は認めなかった.手術はR2リンパ節郭清を伴う胃亜全摘を施行した.組織学的には中分化型腺癌,深達度ssβ,n(-)であった.術後1年5か月の現在再発の徴候なく健在である.胃外発育型胃癌を本邦報告例から検討すると腹部腫瘤を主訴とするものが最も多く,好発部位は大彎側であった.周囲臓器へ浸潤発育するものが多く,本例のごとく浸潤のみられない症例は9例に過ぎなかった.
索引用語
gastric cancer with extragastric development
日消外会誌 26: 2045-2049, 1993
別刷請求先
小坂 篤 〒515 三重県松阪市殿町1550 松阪市民病院外科
受理年月日
1993年3月3日
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