症例報告
転移性肝癌との鑑別に苦慮した多発性肝海綿状血管腫の1手術例
角村 純一, 竹中 博昭, 三木 康彰, 別所 俊哉, 大畑 俊裕, 井上 匡美, 横地 啓也, 野瀬 恵介, 大嶋 仙哉, 永井 勲, 田中 智之*
社会保険紀南綜合病院外科, 同 病理*
症例は52歳の男性の開業医である.腹部超音波検査,CT検査にて肝両葉に径3~6 cmの腫瘤を計7個認めた.造影CTでは腫瘤辺縁が増強され,肝内の分布状態から,転移性肝癌が最も疑われた.Magnetic resonance imaging(以下MRI)ではT1強調にて低信号,T2強調にて均一な高信号領域で示された.血管造影では動脈相早期から静脈相終了後までの造影剤のpoolingがあり,肝血管腫の可能性も示唆された.血中CEA値は正常範囲で,上部消化管造影X線検査,注腸造影X線検査も正常であった.手術所見では肝左葉に暗赤色の斑状模様の弾力ある腫瘤の露出を認めた.診断確定のため肝左葉外側区域切除を行い,術中迅速組織診にて海綿状血管腫の診断を得た.肝海綿状血管腫は一般に単発性が多く,自験例のように転移性肝癌との鑑別に苦慮した症例は比較的まれと思われるので文献的考察を加えて報告した.
索引用語
cavernous hemangioma of the liver, image diagnosis of hepatic tumor, hepatectomy
日消外会誌 26: 2055-2059, 1993
別刷請求先
角村 純一 〒646 和歌山県田辺市湊510 社会保険紀南綜合病院外科
受理年月日
1993年3月3日
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