症例報告
虚血性心疾患をともなった肝臓癌症例に対する心肝同時手術の1治験例
飯田 辰美, 伊藤 英夫, 片桐 義文, 荒川 博徳, 宮田 知幸, 酒井 聡, 千賀 省始, 林 勝知, 広瀬 一
岐阜大学第1外科
症例は68歳の男性で,手術適応のある冠動脈狭窄を伴った肝細胞癌症例に対し,1期的に冠動脈再建術と肝切除術を施行した.
冠動脈病変は右冠動脈の完全閉塞,左主幹動脈,左回旋枝のいずれもで75%狭窄が存在し,肝臓の病変は後下区域に径30 mm大の肝細胞癌が認められた.術前の心機能は駆出率0.65と良好で,かつ臨床病期Iと肝予備能も十分であった.まず体外循環下に3枝に大動脈―冠動脈バイパス術を行い,術中の心係数も3.21/kg/m2と良好で,activated coagulation time(ACT)も144秒と血液凝固能も安定していた.よって体外循環離脱後,引き続き肝後下亜区域切除術を施行した.術中術後経過は良好で,管理困難な出血,創感染などはなく,術後10か月の現在,肝細胞癌の再発なく健在である.
このことは今後増加するであろう虚血性心疾患を合併した肝細胞癌に対する積極的な治療法の1選択肢を示唆するものである.
索引用語
hepatocellular carcinoma combined with ischemic heart disease, simultaneous operation
日消外会誌 26: 2069-2073, 1993
別刷請求先
飯田 辰美 〒500 岐阜市司町40 岐阜大学医学部第1外科
受理年月日
1993年2月10日
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