右開胸食道癌根治手術時における上縦隔リンパ節の郭清可能範囲に関する研究

舟波　裕, 奥山　和明, 唐司　則之, 小出　義雄, 粟野　友太, 松原　宏昌, 松下　一之, 坂本　昭雄, 神津　照雄, 三方　淳男^1）, 近藤　洋一郎^2）, 嶋田　裕^3）, 磯野　可一

千葉大学第2外科, 同　第1病理^1）, 同　第2病理^2）, 同　第1解剖^3）

　食道癌手術時における右開胸および頸部郭清の手術野からの上縦隔リンパ節郭清可能範囲を，成人遺体5体を用いて解剖学的に確認し，この解割学的検討で同手術野から郭清困難な部位のリンパ節ヘの転移状況を，頸・胸・腹3領域郭清手術後の病理解剖25例で検討した．
　成人遺体5体の解剖学的検討では，5体ともに上縦隔の左側は腕頭動脈，左総頸動脈，左鎮骨下動脈の内側まで，大動脈弓下はボタロー靭帯の右側まで郭清可能であり，解剖学的に到達が困難なリンパ節の部位としては，大動脈弓とボタロー靭帯と肺動脈の各左側にその遺残が観察された．しかし，頸．胸・腹3領域郭清手術後の病理解割25例のうち，同部を検索できた15例をみると，大動脈弓とボタロー靭帯の左側にリンパ節転移例を認めず，その郭清の必要性は低いと思われた．以上から，上縦隔リンパ節の徹底郭清は右開胸・頸部郭清の手術野で十分行いうると考えられた．

索引用語
operation of esophageal cancer, clearing of upper mediastinal lymph nodes, approach of right thoracotomy and neck dissection, anatomical evaluation of the possibility of clearing, pathological evaluation of metastatic lymph nodes

別刷請求先
舟波　裕　〒260　千葉市中央区亥鼻1-8-1　千葉大学医学部第2外科

受理年月日
1993年4月14日

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