原著
肝癌切除例におけるトリメタジオン負荷試験と肝実質の病理組織学的所見の対比について
石川 詔雄, 辻 勝久, 深尾 立, 長田 明, 山本 祐二, 大塚 雅昭, 轟 健, 高瀬 靖廣, 中野 雅行*, 田中 栄之介**
筑波大学臨床医学系外科, 同 社会医学系**, 千葉大学真核微生物研究センター*
肝癌切除例56例において,肝予備能の評価に有用なtrimethadione(TMO)負荷試験(DMO/TMO)と非癌肝実質の形態学的所見および肝機能検査(アルブミン:ALB,総ビリルビン:BIL,プロトロンビン時間:PT,ICG負荷試験:ICGR15)を検討した.DMO/TMO値とICGR15やPTとの相関は,それぞれr=-0.495,r=0.473であった.DMO/TMO値は,肝硬変(LC)で0.28,初期のLC(EC)は0.37,肝線維症(FB)と慢性肝炎(CH)0.51,正常(NO)が0.52を示し,またLCとEC間およびECとFB,CH,NO間に,それぞれ有意差を認めた.しかしICGR15,PTは,LCとEC間のみに有意差を認めた.LCの甲型と乙型との検討では,DMO/TMO値やその他の検査値とも両群間に差を認めなかった.以上よりDMO/TMO値は,門脈域から中心静脈域にわたる線維隔壁形成の程度の違いやLCやCHにおける肝実質細胞総量の変化を評価しているものと考えられた.
索引用語
hepatectomy, hepatic functional reserve, trimethadione tolerance test histopathological findings of the hepatic parenchyma
日消外会誌 26: 2155-2159, 1993
別刷請求先
石川 詔雄 〒305 つくば市天王台1-1-1 筑波大学臨床医学系外科
受理年月日
1993年4月14日
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