Zenker憩室の1手術例

川村　弘之, 片岡　誠, 桑原　義之, 呉山　泰進, 岩田　宏, 篠田　憲幸, 加島　健利, 佐藤　篤司, 服部　浩次, 中野　浩一郎, 正岡　昭

名古屋市立大学第2外科

　本邦において比較的まれなZenker憩室の手術例を経験したので報告する．患者は59歳の女性で，左頸部痛を主訴に近医受診．食道透視にて咽頭食道部左側に指示頭大の造影剤の貯留を認め，Zenker憩室の診断にて当科受診した．食道内視鏡検査にて門歯列より約17 cmの部位に憩室入口部を認め，頸部CT検査にて咽頭食道部に接して腫瘤影を認めた．憩室炎を伴うZenker憩室の診断にて憩室切除術を施行．憩室はLannier-Hackerman's spatiumより脱出しており，軽度の浮腫を認めた．病理組織学的には炎症細胞浸潤を伴う憩室炎の診断であった．術後経過は良好で第9病日目に退院した．術後の食道透視では造影剤の通過は良好で，憩室再発も認めなかった．一般に，Zenker憩室の手術成績は良好であるため，自験例のように憩室炎を呈する場合や，憩室による自覚症状を認める場合には，本症は外科的治療の適応であると考えられた．

索引用語
Zenker's diverticulum, pharyngoesophageal diverticulum

別刷請求先
川村　弘之　〒467　名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1番地　名古屋市立大学医学部第2外科

受理年月日
1993年3月3日

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