症例報告
下部食道癌手術後,挙上空腸に発生した虚血性腸炎の1例
石部 良平, 田中 紘輝, 山田 和彦, 石崎 直樹, 西村 明大, 吉嶺 巡, 福枝 幹雄, 白浜 浩司, 平 明
鹿児島大学第2外科
67歳の女性で,下部食道癌切除術後44日日に,挙上空腸の虚血性腸炎によると思われる狭窄をきたした.原因として胸腔内に挙上した空腸の腸間膜動脈の血行障害が考えられた.小腸に虚血性腸炎が発生するのは比較的まれで,嵌頓ヘルニア還納後,外科手術に伴うものなど何らかの外因による血行障害が考えられている.治療は現疾患の進展度,再手術の困難性,患者が再手術に同意しなかったことなどから人工食道の挿入を行った.本法は本来,手術不能食道癌に対してquality of lifeを確保する目的で施行するものであり,長期予後についての検討が十分でないため,適応は厳密でなければならない.今後の経過を厳重に観察することが肝要と思われる.
索引用語
jejunal loop stenosis, circulatory disturbance, esophageal prosthesis
日消外会誌 26: 2180-2184, 1993
別刷請求先
石部 良平 〒890 鹿児島市桜ケ丘8-35-1 鹿児島大学医学部第2外科
受理年月日
1993年4月14日
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