症例報告
日本住血吸虫症に併存した肝細胞癌と鑑別困難であった肝血管腫の1例
高須 伸治, 津下 宏, 三村 久, 折田 薫三
岡山大学医学部第1外科学教室
日本住血吸虫症と肝細胞癌の関係については多数の報告があるが,日本住血吸虫症に併存した肝血管腫の報告は,われわれが検索した範囲ではみあたらない.われわれは,64歳の男性で,computed tomography(CT),超音波エコー,magnetic resonance imaging(MRI),血管造影にて肝後区域の肝細胞癌を疑い,肝後区域切除術を施行した症例を経験した.切除標本の病理組織像にて,肝の間質,とくに門脈枝に,日本住血吸虫の石灰化した多数の虫卵を認め,腫瘤の部分は,venous hemangiomaの所見を呈していた.術前に施行した各種画像にて肝細胞癌と鑑別困難であった理由として,腫瘤が肝表面に近く,血管造影,MRIにても典型的な所見が得られず,また4か月後のリピオドールCTにても,腫瘤にリピオドールの強い集積を認めたことであった.一般的に,非癌部では動脈,門脈のdual supplyのためリピオドールがwash outされやすいが,本症例では,門脈枝に多数の虫卵があり,リピオドールのwash outを不可能にさせた可能性が示唆された.
索引用語
schistosomiasis japonica, hepatocellular carcinoma, hemangioma of the liver
日消外会誌 26: 2208-2211, 1993
別刷請求先
高須 伸治 〒700 岡山市鹿田町2-5-1 岡山大学医学部第1外科
受理年月日
1993年4月14日
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