壊死型虚血性大腸炎の1例

池田　公正, 柴田　信博, 野口　貞夫, 藤本　直樹, 相川　隆夫, 桧垣　直純, 玉井　正光^＊

西宮市立中央病院外科, 同　病理^＊

　盲腸からS状結腸におよぶ広範囲の壊死型虚血性大腸炎を経験した．症例は59歳の女性で，腹痛・嘔吐を主訴に入院した．翌日腹膜炎症状が出現し，緊急開腹術を施行した．盲腸からS状結腸まで連続性壊死に陥っており，壊死型虚血性大腸炎の診断のもと，結腸亜全摘・回腸人工肛門およびS状結腸瘻造設術を施行し，救命しえた．
　本邦における壊死型虚血性大腸炎49例の集計では，年齢34～90歳（平均年齢70.2歳）で60歳代から80歳代に多く，性差はほとんど認められなかった．好発部位は下行結腸・S状結腸であり，この範囲で半数以上を占める．予後不明11例を除く38例の死亡率は44.7％で，そのうち切除施行例36例においても死亡率は41.7％と予後不良である．唯一の治療法は病変部の切除であるが，この際切除断端粘膜面を観察しつつ十分広範囲に切除する必要がある．

索引用語
ischemic colitis, gangrenous-type ischemic colitis

別刷請求先
池田　公正　〒663　西宮市林田町8-24　西宮市立中央病院外科

受理年月日
1993年4月14日

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