症例報告
出血性大腸炎を伴った溶血性尿毒症性症候群の1例
中村 純一, 竹之下 誠一, 小板橋 宏, 登田 尚敬, 片山 和久, 加藤 良二, 加藤 広行, 長町 幸雄
群馬大学第1外科
溶血性尿毒症性症候群(hemolytic uremic syndrome;HUS)は,乳幼児に好発する糸球体腎炎であり,消化器症状の重症化を来すこともある.今回われわれは下血,腹痛にて急性発症したHUSによる壊死性大腸炎の1例を経験し,2期的手術にて救命しえたので,報告する.
患者は4歳の女児.腹痛,トマトジュース様の血便を主訴に,平成2年6月15日近医入院.出血性大腸炎として加療されたが,入院翌日に腎機能の悪化が認められ,当院へ転院した.6月22日,continuous ambulatory peritoneal dialysis(CAPD)カテーテル挿入の目的で開腹したところ,血性腹水と横行結腸の部分壊死を認め,結腸部分切除,上行結腸人工肛門造設術を施行した.腎不全の回復に努め,血液透析から,CAPDへ移行し,腎機能の安定を認めたため,平成3年10月2日,人工肛門閉鎖術施行した.本例の血中にO157,およびVerocyto-toxin(VT)-2に対する抗体の上昇を認め,VT産生大腸菌による出血性大腸炎と考えられた.
索引用語
hemolytic uremic syndrome, necrotizing colitis, enterohemorrhagic E. coli
日消外会誌 26: 2231-2234, 1993
別刷請求先
中村 純一 〒371 前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部第1外科
受理年月日
1993年4月14日
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