原著
手術成績よりみた80歳以上高齢者胃癌切除術式の検討
渡辺 明彦, 山田 貴, 澤田 秀智, 山田 行重, 矢野 友昭, 上山 直人, 棚瀬 真宏, 中野 博重
奈良県立医科大学第1外科
75歳以上の高齢者胃癌切除症例78例を80歳未満(54例)と80歳以上(24例)に分け,その手術成績や遠隔成績を比較検討した.80歳以上では80歳未満に比べ心疾患や糖尿病などの術前併存疾患が多いため,硬膜外麻酔を併用したり,切除範囲やリンパ節郭清の縮小化により手術侵襲を少なくする配慮を行ったにもかかわらず,術後合併症の発生頻度は70.8%と高く,特に呼吸器合併症(33.3%)や術後譫妄(33.3%),心不全(20.8%)などの発生率が高かった.また転帰からみると,80歳以上では術後合併症や他病死による死亡例が多く,胃癌による死亡例が少なかった.したがって80歳未満の胃癌症例に対しては根治手術をめざした積極的な手術が必要と考えられるが,80歳以上の症例に対しては硬膜外麻酔を併用したり,術後譫妄や肺炎予防を含めた綿密な術前術後管理のもとで,切除範囲やリンパ節郭清の縮小化をよりー層徹底する必要があると考えられた.
索引用語
gastric cancer in patients aged 80 years and older
日消外会誌 26: 2287-2292, 1993
別刷請求先
渡辺 明彦 〒634 橿原市四条町840 奈良県立医科大学第1外科
受理年月日
1993年5月11日
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