症例報告
術前診断しえた虫垂粘液嚢胞腺癌の1例
小高 明雄, 金丸 洋*, 高田 伸, 村田 戒, 高木 俊二
埼玉医科大学総合医療センター第2外科, 至聖病院外科*
術前診断し根治手術を行った虫垂粘液嚢胞腺癌の1例を報告する.症例は76歳の女性.臍周囲痛を主訴として来院.注腸X線検査で回盲部に壁外性圧排像を認めた.超音波検査では,右下腹部に不整な乳頭状隆起を伴う嚢胞性腫瘤を認めた.CT検査では,回盲部に壁の石灰化を伴う7×5 cmの嚢胞性腫瘤を認めた.大腸内視鏡検査では虫垂根部周囲に半球状の隆起があり,虫垂開口部から盲腸内へ白色粘液の流出を認めた.以上の所見から虫垂粘液嚢胞腺癌と診断し,回盲部切除・リンパ節郭清術を施行した.摘出標本の病理組織検査では虫垂壁内に浸潤を認める粘液嚢胞腺癌(stage II)と診断された.
虫垂粘液嚢胞腺癌の術前診断は極めて困難で,本邦では術前に診断されたものは,疑診例も含めて7例(本症例を含む)にすぎない.本症例の画像検査では,超音波検査による腫瘤内腔の観察がとくに有用であった.
索引用語
mucinous cystadenocarcinoma, appendix
日消外会誌 26: 2362-2366, 1993
別刷請求先
小高 明雄 〒350 川越市鴨田辻道町1981 埼玉医科大学総合医療センター第2外科
受理年月日
1993年5月11日
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