原著
食道静脈瘤直達手術における危険因子の検討
大橋 薫, 丸山 俊朗, 大浦 慎祐, 渡邊 勇, 児島 邦明, 深澤 正樹, 別府 倫兄, 二川 俊二
順天堂大学第2外科
食道静脈瘤に対する直達手術の危険因子を明らかにするため,肝硬変症432例を対象に手術術式,手術時期,Child分類,ICG負荷試験,一般肝機能,耐糖能ならびに肝癌の有無などについて手術死亡例と耐術例を比較し,以下のごとく結果をえた.1)予防,待期,緊急の各手術時期でChild C(n=97)はA(n=162),B(n=173)よりも手術死亡率が有意に高率であった(p<0.01).2)ICG血漿停滞率(ICG-R15)≧50%,ICG血漿消失曲線(K-ICG)<0.04ならびに血清アルブミン値(Alb)<3.5 g/dl,血清コリンエステラーゼ値(Ch-E)<300 IU/l,プロトロンビン時間(PT)<40%,ヘパプラスチンテスト(HP)<40%,血清総コレステロール値(T-Cho)<100 mg/dl,血清総ビリルビン値(T-Bil)≧2.5 mg/dlを示す症例は手術死亡率が有意に高率であった.(p<0.01).3)緊急手術では肝癌合併例(n=6)は非合併例(n=24)に比べ手術死亡率が有意に高率であった(p<0.01).以上より,Child C,ICG-R15が50%以上あるいはK-ICGが0.04未満,Ch-E 300 IU/l未満,PT 40%未満,HP 40%未満を示す肝機能不良例,肝癌を合併した場合の緊急手術例は直達手術のハイリスク群と考えられた.
索引用語
risk factors for surgical treatment of esophageal varrices, nonshunting operation for esophageal varices, preoperative evaluation of hepatic reserve
日消外会誌 26: 2387-2394, 1993
別刷請求先
大橋 薫 〒113 文京区本郷2-1-1 順天堂大学医学部第2外科
受理年月日
1993年6月14日
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