原著
硬変併存肝癌の肝切除後早期予後因子としての術後血中human hepatocyte growth factor値測定意義について―臨床的および実験的検討―
長田 真二, 佐治 重豊, 宇野 郷三, 加藤 元久, 杉山 保幸, 鷹尾 博司, 梅本 敬夫, 宮 喜一, 東 修次, 古田 智彦
岐阜大学医学部第2外科
最近21か月間に経験した硬変併存肝癌22例を用い,肝切除後早期予後評価法としての血中human hepatocyte growth factor(hHGF)値測定意義につき検討した.結果:(1)術前hHGF値は肝機能検査値と高い相関を示し,予後ともよく相関していた(p=0.0001).(2)術後hHGF値の推移は術中ケトン体比から算出した手術侵襲度に影響され,予後不良群と良好群では異なった変動様式を示した.次に,術後肝不全症例で高hHGF値が遷延する意味を推察する目的で,chemical hypoxiaおよび四塩化炭素による障害ラット培養肝細胞を作製し実験的に検討した.その結果,hHGF添加により正常肝細胞で観察された細胞内Ca2+上昇反応は障害肝細胞では消失するだけではなく,培地中の肝逸脱酵素量もhHGF添加により増加する傾向を示した.したがって血中hHGF値の測定は,術前肝機能検査や術後早期予後評価法として,また術後推移は肝不全予測の指標として極めて有用であると考えられた.
索引用語
human hepatocyte growth factor, arterial ketone body ratio, early surgical prognosis of the hepatocellular carcinoma, damaged cultured hepatocytes
日消外会誌 26: 2401-2409, 1993
別刷請求先
長田 真二 〒500 岐阜市司町40 岐阜大学医学部第2外科
受理年月日
1993年6月14日
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