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第26巻 第10号 1993年10月 [目次] [全文 ( PDF 457KB)]
特集

消化器癌における分子生物学的パラメーターの予後因子としての有用性

上田 政和, 菊池 潔, 安藤 暢敏, 都築 俊治, 北島 政樹

慶應義塾大学医学部外科学教室, 東京電力病院外科

 消化器癌における分子生物学的パラメーターの予後因子としての有用性を明らかにすることを目的として,癌遺伝子増幅の有無と予後や再発など癌患者の臨床像との関連を解析した.その結果食道癌では,int-2およびc-erb B癌遺伝子増幅が,胃癌ではint-2およびc-erb B-2癌遺伝子増幅が高率に認められたが,大腸癌や肝細胞癌では,いずれの癌遺伝子も増幅頻度は10%以下であった.食道癌,胃癌ではint-2増幅群で術後累積生存率が低下し,さらに食道癌では遠隔臓器転移が,胃癌では腹膜転移と遠隔臓器転移が非増幅群に比較して有意に高率であった.c-erb B癌遺伝子増幅は食道癌で高率にみられたが,これらの症例ではいずれも手術時にリンパ節転移がみられ,しかも術後5年生存率は低下していた.以上,分子生物学的手法により癌遺伝子増幅を検索することにより,癌患者の治療上重要な情報を得ることが可能であり,有用な腫瘍マーカーであることが明らかにされた.

索引用語
oncogene amplification, prognostic factor, cancer in digestive organ

日消外会誌 26: 2494-2498, 1993

別刷請求先
上田 政和 〒160 新宿区信濃町35 慶應義塾大学医学部外科

受理年月日
1993年6月14日

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