原著
食道癌術後の顆粒球機能の変動と血中granulocyte colony-stimulating factor値の意義
村上 義昭, 横山 隆*, 立本 直邦, 児玉 節, 竹末 芳生, 今村 祐司, 松浦 雄一郎
広島大学第1外科, *同 総合診療部
開胸,開腹を伴う食道癌術後の末梢血顆粒球機能と,顆粒球の主たる増殖刺激因子であるgranulocyte colony-stimulating factor(G-CSF)の血中濃度の関連を究明するために,食道癌症例(E群,n=12)と胃亜全摘術を施行した胃癌症例(G群,n=12,対照)に対して,術前および術後,経時的に末梢血の白血球数(WBC),顆粒球数(GC),顆粒球化学発光量(CL),G-CSF値(G-CSF)を測定した.E群のWBC,GCはG群に比べ,術後4,8時間において有意の低値を示し(p<0.01),CLは術後4,8,24時間後に有意の低値を呈した(p<0.05).しかし,E群のG-CSFはG群に比べ,4,8時間後に有意の高値を呈し(p<0,01),術後4,8時間におけるPMNとG-CSFの間には有意な負の相関が認められた(p<0.01).以上より食道癌術後早期にはG-CSFをはじめとするサイトカインの過剰な刺激により,顆粒球の組織への接着,遊出の増加をきたし,末梢血顆粒球の数,CL値の低下状態が生じていることが類推された.
索引用語
surgical stress of esophageal cancer, granulocyte, granulocyte colony-stimulating factor, chemiluminescence, cytokine
日消外会誌 26: 2561-2566, 1993
別刷請求先
村上 義昭 〒734 広島市南区霞1-2-3 広島大学医学部第1外科
受理年月日
1993年7月7日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|