原著
肝切除後の膵分泌性トリプシンインヒビターの変動
中郡 聡夫*, 三好 弘文, 角田 洋三, 竹内 英世, 林 秀樹, 望月 亮祐
熊谷総合病院外科(*現千葉大学第2外科)
肝切除後の膵分泌性トリプシンインヒビター(PSTI)測定の意義につき検討した.当院で肝切除術を受けた29例を対象とし術前および術後第2,4,7,14,21,28病日にPSTIを測定した.PSTIは全例で肝切除後一過性に上昇し,第4病日に最高値となる例が最も多かった.経過良好群(n=19)のPSTIは術前14.2±7.4 ng/mlから術後最高37.4±33.4 ng/mlまで上昇し,その後漸減し3~4週で正常化した.肝不全,肺合併症,腎障害および術後膵炎などの合併症併発群(n=10)では術前15.5±11.4 ng/mlから術後最高244.2±238.7 ng/mlと高度の上昇を認めた.したがってPSTIは手術侵襲や炎症により上昇するacute phase reactantと考えられた.また術後第4病日のPSTIは手術時間と有意(p<0.01)の相関を示しPSTIは手術侵襲を評価する指標と考えられた,PSTIは術前のヘパプラスチンテストおよびindocyanine green 15分停滞率(ICGR15)と有意に相関し,PSTIの術後の応答は術前肝機能にも依存することが示唆された.
索引用語
pancreatic secretory trypsin inhibitor, hepatectomy, acute phase reactant, surgical stress
日消外会誌 26: 2572-2577, 1993
別刷請求先
中郡 聡夫 〒260 千葉市中央区亥鼻1-8-1 千葉大学医学部第2外科
受理年月日
1993年7月7日
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