原著
肝硬変症例における肝血行動態・酸素需給動態と肝切除の及ぼす影響に関する検討
伊藤 隆文, 野浪 敏明, 原田 明生, 黒川 剛, 氏田 剛, 小林 裕幸, 貝沼 関志*, 島田 康弘*, 中尾 昭公, 高木 弘
名古屋大学第2外科, 同 麻酔科*
肝切除14症例(肝硬変7例,非硬変7例)を対象とし,全麻下にSwan-Ganz catheterを挿入後,超音波トランジットタイム血流計を用いて肝動脈・門脈血流量を測定し,肝硬変症の肝および全身血行動態と肝切除前後の変化を検討した.肝硬変群は非硬変群と比較してhyperdynamic stateを呈し肝動脈・門脈血流量に差を認めなかったが門脈血流比は有意に低値をとった.肝切除前後においては肝硬変群は門脈抵抗が有意に増加し,一方非硬変群では心拍出量の増加に伴う門脈血流比の低下を認めた.対象例中2区域以上肝切除10例の検討では切除後肝酸素供給量の有意な低下を認めた.肝硬変症例では門脈抵抗が高く心拍出量の増加が門脈血流を維持し,肝切除後には肝内門脈域の相対的血流増加に対して柔軟性に乏しいことが示唆された.肝硬変症は特に肝切除後には門脈抵抗が上昇するため肝血流の維持に留意する必要がある.
索引用語
liver cirrhosis, liver resection, hyperdynamic state, portal hemodynamics
日消外会誌 26: 2578-2583, 1993
別刷請求先
野浪 敏明 〒466 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学第2外科
受理年月日
1993年7月7日
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