原著
原発性肝癌に対する選択的担癌区域動脈・門脈塞栓術の意義
真々田 裕宏, 恩田 昌彦, 金 徳栄, 田尻 孝
日本医科大学第1外科
肝細胞癌(HCC)に対する治療成績の向上を目的とし肝動脈塞栓術(TAE)に加え,選択的担癌区域門脈塞栓術(SSPE)を施行したHCC 31例(うち肝硬変併存肝切除例7例)を対象として,SSPE後の臨床像,非塞栓区域の代償性肥大について検討し,さらに肝切除術後の臨床経過,およびSSPEの抗腫瘍効果についてTAE単独施行例と比較検討した.
(1)SSPEによる肝機能の悪化は一過性であり,ほぼ2週後には回復した.また門脈圧は術直後で有意に上昇した.(2)SSPE後約2週目での非塞栓区域の体積は有意に増加した.(3)術前処置としてのTAEにSSPEを加えることで切除後の残存肝に与える影響が少なくなる傾向にあった.(4)切除例での腫瘍壊死率よりSSPEはTAEの抗腫瘍効果を増強させた.
以上より,SSPEはHCCに対する術前処置として,また集学的治療法の1つとして有用であった.
索引用語
hepatocellular carcinoma, transcatheter arterial embolization, portal vein embolization, hepatectomy, liver regeneration
日消外会誌 26: 2605-2613, 1993
別刷請求先
真々田裕宏 〒113 文京区千駄木1-1-5 日本医科大学第1外科
受理年月日
1993年7月7日
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