原著
肝細胞癌と他臓器癌との重複癌の検討
大岩 寛治, 永末 直文, 河野 仁志, 林 貴史, 内田 正昭, 山野井 彰, 竹本 好成, 槙野 好成, 小野 隆司, 林 順子, 中村 輝久
島根医科大学第2外科
肝細胞癌(以下,肝癌)182例中,17例(9.3%)に他臓器癌20病変が併存していた.同時性は7例,異時性は10例で,異時性の10例中9例が他臓器癌の治療後に肝癌が診断された.他臓器癌のなかでは胃癌が最も多かった(52.9%).重複肝癌患者の平均年齢は65.0歳で通常の単独肝癌患者のそれは61.0歳であった(p=0.087).また,異時性重複癌患者の平均年齢(68.1歳)は同時性重複癌のそれ(60.6歳)よりも有意に高かった(p<0.05).輸血歴の頻度は異時性で70.0%,同時性で28.6%であった(p=0.092).17例中,両癌とも根治切除できたのは11例(64.7%)であった.根治切除できたものの5年生存率は34.1%で,全肝癌根治切除例と比べて大差なく,根治切除の適応があれば積極的な治療を試みるべきと考えられた.
索引用語
hepatocellular carcinoma, extrahepatic primary cancer, multiple primary cancer
日消外会誌 26: 2614-2619, 1993
別刷請求先
大岩 寛治 〒693 出雲市塩冶町89-1 島根医科大学第2外科
受理年月日
1993年7月7日
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