症例報告
胃癌虫垂転移の1治験例
湯山 友一, 長谷川 格*, 藤岡 久*, 古畑 智久, 平回 公一
札幌医科大学第1外科, *済生会小樽北生病院外科
胃癌による虫垂転移はまれな疾患であり,本邦においては13例の報告を見るのみである.
症例は41歳の女性で,Borrmann 2型胃癌に対し胃全摘術を施行した.術前より右下腹部の間欠的疼痛を訴え虫垂切除を希望したため合併切除とした.術中,胃癌の肉眼所見は,P0・H0・N1・S1,Stage IIであった.肉眼的には虫垂に炎症および悪性所見を認めなかったが,術後病理組織学的所見で虫垂の粘膜下層および筋層に胃癌組織所見と同様の低分化型腺癌を認め,胃癌虫垂転移と診断した.術後2年を経過した現在,再発の徴候なく健在である.
胃癌による虫垂転移は一般に2次性急性虫垂炎として術後に発見される症例が少なからず報告されているが,本症例は術中に炎症・悪性所見もなかったが病理組織学的検索で初めて診断されたまれな症例と思われた.
索引用語
gastric cancer, appendiceal metastasis of gastric cancer, secondary acute appendicitis
日消外会誌 26: 2649-2652, 1993
別刷請求先
湯山 友一 〒060 札幌市中央区南1条西16丁目 札幌医科大学第1外科
受理年月日
1993年7月7日
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