症例報告
術前に膵solid and cystic tumorを疑った結核性リンパ節炎の1例
石過 孝文, 若林 剛, 陣崎 雅弘*, 井戸 邦雄*, 石井 誠一郎, 北川 裕章, 北川 雄光, 松本 賢治, 横山 勲, 納賀 克彦
川崎市立川崎病院外科, *日本鋼管病院放射線診断部
われわれは術前に膵solid and cystic tumor(以下,SCTと略す)と考えた結核性リンパ節炎の1例を経験したので報告する.
症例は25歳の女性,フィリピン人.主訴,心窩部および右季肋部の持続性鈍痛.家族歴に特記事項なく,10歳時に肺結核の既往がある.入院後,腹部エコー,Computed tomographyで,膵頭部から肝門部にいたる,嚢胞部と充実部の混在した腫瘍像を認めた.血管造影ではepicholedochal plexusの拡張と圧排像,門脈本幹の圧排と狭窄を認めたが,明らかなencacementや腫瘍濃染像はみられなかった.術前,診断に苦慮したが,膵頭部SCTを疑い,開腹術施行.腫瘍の術中迅速病理では,悪性像を認めず,ラングハンス型巨細胞がみられた.腫瘤は,リンパ節として摘出可能であった.術後病理診断は,結核性リンパ節炎であった.膵頭部の結核性リンパ節炎はその好発年齢,画像上の特徴から,膵頭部SCTとの鑑別が問題になると考えられた.
索引用語
intraabdominal tuberculous adenitis, biliary tract tuberculosis, solid and cystic tumor of the pancreas
日消外会誌 26: 2668-2672, 1993
別刷請求先
納賀 克彦 〒210 川崎市川崎区新川通12-1 川崎市立川崎病院外科
受理年月日
1993年6月14日
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