直腸癌術後に発生した腹腔内デスモイド腫瘍の1例

平野　達也, 青木　康明, 伊藤　隆康, 岸川　英樹

北九州市立若松病院外科

　直腸癌術後に発生した小腸間膜原発デスモイド腫瘍の1例を経験したので報告する．症例は65歳の女性で，Miles術後3年目に腹痛，下痢を主訴として入院した．Ultrasonography，CTなどの検査より腸間膜原発の腫瘍を疑い，1990年8月20日に手術を行った．手術所見では，十二指腸第3部より左総腸骨動脈にかけての小腸間膜原発の腫瘍で，空腸起始部を中心に約10 cmの小腸合併切除を行い腫瘍を摘出した．切除標本では10×8×5 cm大で白色調を呈し，表面平滑，弾性硬の充実性腫瘍であり，組織学的には膠原線維の間質を伴った線維芽細胞の束状増殖を示すデスモイド腫瘍であった．
　本症例は大腸ポリポーシスの合併を伴わない腹腔内デスモイド腫瘍単独の症例であり，本邦における報告では現在までのところ，本症例を含め文献上28例と非常にまれである．

索引用語
intra-abdominal desmoid tumor

別刷請求先
平野　達也　〒813　福岡市東区馬出3-1-1　九州大学医学部第1外科

受理年月日
1993年6月14日

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