食道癌術後呼吸器感染症およびmethicillin-resistant Staphylococcus aureus感染症の予防対策

草地　信也, 炭山　嘉伸, 碓井　貞仁, 倉重　眞澄, 長尾　二郎, 栗田　実, 鈴木　雅丈, 川井　邦彦, 有馬　陽一

東邦大学外科学第3講座

　食道癌術後の呼吸器感染およびmethicillin-resistant Staphylococcus aureus（以下，MRSA）感染の予防として周術期の輸液管理と第1世代セフェム剤（cefazolin以下，CEZ）の投与が有効であった．対策前のA群では術中に642±69 ml/h．の電解質輸液がなされ，低アルブミン血症（2.6±0.2 g/dl）から肺水腫を生じ，調節呼吸を要し，呼吸器感染の原因となっていた．対策後のB群では術中電解質液を72.4±69 ml/h．に抑え，凍結人血漿を1.5～2.0 ml/kg/h．投与し，血清アルブミン値を2.8±0.1 g/dlに保った．調節呼吸期間はA群平均38.7時間からB群平均4.9時間と短縮され，呼吸器感染が予防された．また，縫合方法の改良で頸部膿瘍が激減した．さらに，A群では術後感染予防に第2・3世代セフェム剤やこれらとアミノ配糖体剤が投与されたがB群では全例にCEZを投与し，菌交代現象によるMRSAの定着を防いだ．これらの対策の結果，MRSA術後感染はA群8.7％からB群0％と有意に減少した．

索引用語
postoperative MRSA infection, prevention of respiratory tract infection after esophageal resection, Cefazolin

別刷請求先
草地　信也　〒153　目黒区大橋2-17-6　東邦大学医学部付属　大橋病院外科学第3講座

受理年月日
1993年9月8日

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