原著
早期胃癌におけるproliferating cell nuclear antigen標識率の術前生検標本での検討
前田 清, 鄭 容錫, 小野田 尚佳, 加藤 保之, 有本 裕一, 新田 敦範, 曽和 融生
大阪市立大学医学部第1外科
早期胃癌患者82例を対象とし,増殖期細胞に特異的な抗proliferating cell nuclear antigen(PCNA)モノクローナル抗体を用いて,術前の内視鏡検査でえられた癌病巣からの生検標本についてPCNA標識率をもとめ,胃癌の増殖能と壁深達度,リンパ節転移との関係について検討した.PCNA標識率と壁深達度との関係ではsm癌ではm癌に比べ,有意にPCNA標識率が高く,また,リンパ節転移陽性例では陰性例に比べて有意に標識率が高かった.PCNA標識率が40%以上の6例いずれもsm癌であり,全例にリンパ節転移が認められた.これに対し,標識率が30%以下の症例ではリンパ節転移はみられなかった.
以上より,術前の生検標本でのPCNA標識率は壁深達度,リンパ節転移の指標となりうることが示唆され,PCNA標識率が30%以下の症例では縮小手術の可能性が示唆された.
索引用語
proliferatig cell nuclear antigen, early gastric cancer, lymph node metastasis, reduced radical gastrectomy
日消外会誌 26: 2740-2744, 1993
別刷請求先
前田 清 〒545 大阪市阿倍野区旭町1-5-7 大阪市立大学医学部第1外科
受理年月日
1993年9月8日
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