原著
肝移植後のgraft viabilityに対するdonorの絶食の影響に関する実験的検討
佐藤 浩一, 野崎 浩, 榊原 宣
順天堂大学医学部第1外科
肝移植後のgraft viabilityをdonorの絶食期間とdonor肝の単純浸漬冷却保存時間cold ischemic time(CIT)の面より検討した.肝移植後3時間の胆汁排泄量は,絶食期間が48時間以上になると,CITの延長するほど低値を示した.また30日生存率は絶食期間48時間,CIT 6時間,絶食期間72時間,CIT1,6時間で0%と,Euro-Collins solutionの安全域とされるCIT 6時間でも極めて不良であった.肝ATPは絶食期間72時間で有意に低値を,肝ADPとenergy chargeは絶食期間48,72時間で有意に低値を示し,これらはCITの延長とともにより低下した.電顕による観察では,絶食期間48時間以上で細胞質の空胞化,類洞内にblebが認められ,CITが6時間では類洞内皮細胞の変性,脱落が認められた.以上よりdonorの48時間絶食ではCITが延長すると,また72時間絶食ではCITが短時間でも,肝移植後のgraft viabilityを低下させ,移植成績を不良とする原因となりうることが示唆された.
索引用語
orthotopic liver transplantation, donor starvation, cold ischemic time, primary graft nonfunction
日消外会誌 26: 2767-2774, 1993
別刷請求先
佐藤 浩一 〒113 文京区本郷2-1-1 順天堂大学医学部第1外科
受理年月日
1993年9月8日
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