原著
術前照射療法を併用した進行直腸癌症例の術後排尿機能
白井 芳則, 布村 正夫*, 更科 広実*, 斉藤 典男*, 谷山 新次, 新井 竜夫, 小野 正人, 中島 伸之*
国立がんセンター東病院消化器外科, 千葉大学第1外科*
術前照射療法を併用した直腸癌切除症例34例の術後排尿機能を検討した.術前照射終了後にみられた排尿障害は頻尿を主訴とする急性膀胱炎症状が主体であった.骨盤内自律神経温存の程度と術後排尿機能では,両側および片側骨盤神経叢温存症例で排尿機能がほぼ良好に保たれたが,非温存例では高度障害が66.7%(2/3)と多く認められた.術式別では低位前方切除例に排尿障害を認めなかったのに対し,腹会陰式直腸切断例では53.9%(14/26)に障害を認めた.両側骨盤神経叢を温存した15症例の排尿機能検査では,照射終了後40 ml以上の残尿を21.4%(3/14),最小尿意100 ml未満を23.1%(3/13),最大尿意200 ml未満を15.4%(2/13),膀胱コンプライアンス20 ml/cmH2O未満を28.6%(4/14)の症例に認め,さらに術後1か月目に残尿量の増加,最大尿意の減少,膀胱コンプライアンスの低下が出現したが1年以上経過症例においてこれらの異常はすべて改善していた.
索引用語
rectal cancer, preoperative irradiation therapy, urinary function
日消外会誌 26: 2816-2821, 1993
別刷請求先
白井 芳則 〒277 柏市柏の葉6-5-1 国立がんセンター東病院消化器外科
受理年月日
1993年9月8日
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