症例報告
石灰化を伴った肝門部胆管癌の1例
安村 幹央, 尾関 豊, 松原 長樹, 石田 秀樹, 木村 富彦
国立東静病院外科
症例は55歳の男性.近医で黄疸を指摘された.腹部超音波検査で肝内胆管の著明な拡張と肝門部の不整形腫瘤を認めた.Computed tomographyで肝門部に30 mm×20 mmの低吸収域を認め,内部には石灰化を疑わせる高吸収域を伴っていた.腹部血管造影,胆管造影所見とあわせ,右肝管を中心とする肝門部胆管癌と診断し,尾状葉合併拡大肝右葉切除術を施行した.切除標本で腫瘍は3.0×2.5 cm,灰白色調を呈する高分化型管状腺癌で,腺腔内を中心に砂粒腫様の微細な石灰化が多数認められた.本症例における石灰化の機序はdystrophic calcificationで,組織学的形態からは砂粒体型,壊死型の混在する型と思われた.悪性腫瘍中に石灰化を認めることはまれではなく,甲状腺癌,乳癌などの石灰化はよく知られている.しかしながら本例のごとき胆管癌石灰化の報告例は少なく,石灰化の機序を考える上でも貴重な症例と思われたので報告した.
索引用語
calcification of bile duct carcinoma, right trisegmentectomy of the liver, dystrophic carcification
日消外会誌 26: 2854-2858, 1993
別刷請求先
安村 幹央 〒464 名古屋市千種区鹿子殿1-1 愛知県がんセンター消化器外科
受理年月日
1993年9月8日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|