症例報告
痔瘻から骨盤直腸窩,後腹膜腔,腹壁へ広範に広がった壊死性筋膜炎の1例
丹羽 篤朗, 佐々木 信義, 三井 敬盛, 加藤 丈博, 小山 浩, 成田 守, 大和 俊信, 柴田 和男, 角岡 秀彦
豊川市民病院外科
消化管病変に起因した壊死性筋膜炎はまれであるが,いったん生じれば骨盤腔,後腹膜腔の筋肉,筋膜の解剖学的関係から後腹膜控,大腿,殿部,体幹,会陰,外陰部などに広範に波及し致死的になる.我々は46歳の精神分裂病の男性で,痔瘻に起因して骨盤直腸窩,後腹膜腔,体幹へと広がった壊死性筋膜炎の症例を経験した.緊急手術を施行し後腹膜腔は両側の腹直筋外縁切開で腹膜外にドレナージし,体幹感染部は腹直筋,外腹斜筋筋膜上で剥離し開放しドレナージとデブリードメントを行った.その後,抗生剤,γ-globulinの全身投与と呼吸・循環・栄養管理を行う集中治療を行い,さらに積極的局所療法として連日全身麻酔下に希ポビドンヨード液で膿瘍腔,皮下感染部の洗浄を行い救命した.救命のためには早期に診断し早期に外科治療を開始するだけでなく,その後の全身治療,連日の積極的局所治療が重要である.
索引用語
necrotizing fasciitis, anal fistula, nonclostridial gas gangrene
日消外会誌 26: 2883-2887, 1993
別刷請求先
丹羽 篤朗 〒442 豊川市光明町1-19 豊川市民病院外科
受理年月日
1993年9月8日
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