症例報告
1期的切除を行った同時性咽頭・喉頭・食道・胃4重複癌の1例
大橋 龍一郎, 多幾山 渉, 高嶋 成光, 万代 光一*
国立病院四国がんセンター外科, 同 病理*
1期的に切除可能であった下咽頭癌,喉頭癌,食道表在癌,早期胃癌の同時性4重複癌の1例を報告する.症例は血痰を主訴とする66歳の男性.喉頭鏡検査で,咽頭,喉頭にそれぞれ,直径1 cm大の褪色調の隆起性病変を,上部消化管内視鏡検査で,胸部下部食道に直径0.5 cm大の0-IIa型食道癌,胃体下部にIIa集族型胃癌を発見された.手術は下咽頭喉頭全摘,食道抜去,胃噴門側切除を行った.病理組織検査では下咽頭,喉頭,食道の病変はいずれも中分化型扁平上皮癌で,食道癌は深達度smであったが,喉頭癌は喉頭軟骨まで浸潤しており,頸部に3個のリンパ節転移がみられた.全割標本の検索ではこれらの病変を含め,合計10か所の多発癌病巣がみられた.胃病変は高分化型腺癌で深達度sm,リンパ節転移はみられなかった.本例は,頭頸部癌と食道癌に共通した発癌因子の存在を示唆させる興味ある1例であった.
索引用語
synchronous cancer, quadruple cancer, cancer of upper alimentary tracts
別刷請求先
大橋龍一郎 〒790 松山市堀之内13 国立病院四国がんセンター外科
受理年月日
1993年9月8日
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