症例報告
十二指腸悪性神経鞘腫の1例
江口 晋, 元島 幸一, 橋本 聡, 梶原 義史, 小原 則博, 角田 司, 兼松 隆之
長崎大学第2外科
症例は84歳の女性.主訴は右季肋部痛.Computed tomographyにて膵頭部に腫瘤を認め,血管造影にて同部に淡いtumor stainあり.十二指腸粘膜下腫瘍の診断で膵頭十二指腸切除術施行.摘出腫瘤は径8 cm大,十二指腸壁より壁外性に発育し,内部に出血壊死を認めた.組織学的にはH.E.染色でリンパ球浸潤が多く,紡錘型の腫瘍細胞が束状に配列し,核のpalisadingを示すAntoni A型の組織型を部分的に認めた.銀染色では,繊細な好銀線維が,線維末端まで不規則に分枝していた.免疫染色ではS-100蛋白,desmin,neuron specific enolase,actinすべて陰性であった.Mitosisは少なく,良性もしくは低悪性度の神経鞘腫と診断された.しかし,35か月後,肝転移再発により死亡した.
十二指腸神経鞘腫の本邦報告は20例のみで,なかでも悪性は3例であった.本例は免疫染色を用いても,平滑筋腫瘍との鑑別が困難で,H.E.および銀染色所見より神経輸腫と診断し,臨床経過より悪性と判断した.
索引用語
malignant schwannoma of the duodenum, S-100 protein staining, liver metastasis of the malignant schwannoma of the duodenum
別刷請求先
江口 晋 〒852 長崎市坂本1-7-1 長崎大学医学部第2外科
受理年月日
1993年10月13日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|