症例報告
腹腔鏡下に摘出した結石を伴った左側胆嚢の1例
御江 慎一郎, 酒井 滋, 石川 泰郎, 加納 宣康, 山川 達郎
帝京大学附属溝口病院外科
胆嚢の先天性位置異常のうち,内臓逆位を伴わない左側胆嚢は非常にまれな奇形といわれている.最近我々は腹腔鏡下に摘出した胆嚢結石を伴う左側胆嚢の1例を経験した.
術前,ultrasonography(以下,US),endoscopic retrograde cholanglo-pancreatography(以下,ERCP)およびcomputed tomography(以下,CT)を施行したところ,USでは位置異常を指摘できなかったが,ERCPおよびCT検査の所見から,胆嚢は肝左葉下面で肝鎌状間膜の左側に位置していると考えられた.腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行され,術中所見で胆嚢は肝鎌状間膜の左側にあり,胆嚢床が肝左葉下面に認められ本症と診断した.教室では,1990年5月29日に本邦第1例目の腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行して以来,約450例に同術式を施行してきたが,左側胆嚢と診断されたのは本症例のみである.左側胆嚢は,本邦では我々が検索した範囲では,自験例を含め33例の報告があり,かつ腹腔鏡下に摘出したのは本例のみである.本症は手術中に発見されることがほとんどであるが,術前診断には,CTあるいはUSが有用であると考えられた.
索引用語
left-sided gallbladder, laparoscopic cholecystectomy, cholecystolithiasis
別刷請求先
御江慎一郎 〒213 川崎市高津区溝口74 帝京大学附属溝口病院外科
受理年月日
1993年9月8日
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