症例報告
門脈血管内超音波検査が術式決定に有用であった肝門部胆管癌の1例
金子 哲也, 中尾 昭公, 井上 総一郎, 原田 明生, 野浪 敏明, 高木 弘
名古屋大学第2外科
症例は56歳の女性の肝門部胆管癌である.経皮経肝胆道造影,経皮経肝胆道鏡検査による胆道精査の結果,病変は左肝管から総肝管に存在した.腹腔動脈造影にて異常を認めず,経皮経肝門脈造影にて門脈左枝は閉塞し門脈本幹に軽度の壁不整を認めた.その後,門脈血管内超音波検査を施行した.本法によると門脈本幹の壁は0.5 mm~0.1 mmの高エコー帯に保たれており浸潤陰性であったが門脈壁に接した腫瘍内に肝動脈右枝が埋没している所見を認めた.この所見は術中に確認され,肝左葉切除,尾状葉切除,肝動脈右枝合併切除を施行し,部分的門脈血動脈化の目的で固有肝動脈下腸間膜静脈吻合を施行した.術後,胆管空腸吻合部縫合不全をきたしたが,保存的療法にて治癒した.門脈血管内超音波検査は肝門部胆管癌における門脈壁の浸潤の有無や肝動脈右枝の浸潤の診断が正確にでき,術式立案に有用であった.
索引用語
proximal bile duct cancer, intraportal endovascular ultrasonography, partial arterialization of the portal vein
別刷請求先
金子 哲也 〒466 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学医学部第2外科
受理年月日
1993年9月8日
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