症例報告
腎細胞癌膵転移の1例
大坂 喜彦, 加藤 紘之, 中村 文隆, 大久保 哲之, 奥芝 俊一, 下沢 英二, 岡安 健至, 田辺 達三, 小柳 知彦*, 野島 孝之**, 井上 和秋**
北海道大学医学部第2外科, 同 泌尿器科*, 同 附属病院病理部**
腎細胞癌は肺・肝・骨髄などに比較的高頻度に血行性転移をきたすが,膵への転移は少ない.われわれは腎摘出後2年,4年後にそれぞれ肺転移巣を摘出し,6年後に再々度の肺転移および膵転移を切除した1症例を経験した.腎細胞癌膵転移切除例の報告は少なく,自験例を含め22例にすぎない.これらの症例は何らかの臨床症状を契機に発見されたものが多く,術後経過観察中の無症候性膵転移の発見切除例は自験例を含め3例のみである.進行期腫瘍術後の経過観察は局所のみならず全身臓器の精査が必要と思われた.腎細胞癌の転移巣に対しては化学療法あるいは放射線療法は効果が小さくその予後は一般に不良である.しかし自験例のように複数回の手術を受けながら比較的良好な予後が得られる症例もあることから,他に有効な治療法のない現時点では腎細胞癌多発転移症例もまた外科治療の対象となりうると思われた.
索引用語
renal cell carcinoma, metastatic pancreatic tumor
別刷請求先
大坂 喜彦 〒060 札幌市北区北14条西5丁目 北海道大学第2外科学教室
受理年月日
1993年10月13日
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