特別講演
腫瘍マーカーの臨床応用
大倉 久直
国立がんセンター中央病院薬物療法部
腫瘍マーカーの臨床的意義は高危険度群患者の追跡,がん診断の補助,がんの生物学的特性の鑑別,進行度と予後の推定,治療経過の観察と再発の発見などにある.消化器がんには多数の腫瘍マーカーがあるが,早期診断に有用なものはない.唯一,肝細胞癌が慢性ウイルス性肝炎と肝硬変症は血清α1-fetoprotein(AFP)とprohrombim inhibitor produced by vitamin k defficiency(PIVKA-2)の定期的な測定で比較的早期に診断される.また,術前血清マーカー値が独立の予後因子であることが証明された.胃や食道では産生腫瘍マーカーやがん遺伝子の過剰発現から予後不良のがんが診断できる.治療効果判定には定期的な定量測定が有効であり,血中半減期と治療後の最低レベルが治療の根治度を,術後の増加が再発の前兆を示す.
がん遺伝子,抑制遺伝子と遺伝子産物が腫瘍マーカーとして利用され,糞便抽出液や膵液の検査で早期診断が可能となろう.
索引用語
tumor marker, serum diagnosis of cancer, prognostic factor of cancer, monitoring of cancer patients, cancer specificity and sensitivity
別刷請求先
大倉 久直 〒104 中央区築地5-1-1 国立がんセンター中央病院薬物療法部
受理年月日
1993年11月1日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|