大腸癌における癌胎児性fibronectinと正常型fibronectinの局在―とくに組織学的進行度，肝転移および予後との関連性について―

中村　正人, 犬房　春彦, 足立　俊之^1）, 進藤　勝久, 安富　正幸, 松浦　秀光^2）

近畿大学医学部第1外科, 鳥潟病院外科^1）, Program of Molecular Medicine, Paciflc Northwest Research Foundation^2）

　大腸癌および大腸癌肝転移で切除された原発巣99例と肝転移巣12例について癌胎児性fibronectin（oncFN）および正常型fibronectin（norFN）の免疫組織化学的染色を行い，oncFNとnorFNの局在と進行度，肝転移および予後との関連を検討した．染色性を陰性（－），陽性（＋），強陽性（＋＋）と3群に分け判定した．oncFNの発現形式はnorFNと異なり，carcinoembryonic antigen（CEA）などの分泌型抗原の様相を呈した，oncFN染色性は，stageの進行と正の相関を認めた．また肝転移例原発巣のoncFNの強陽性率は53％であり，非肝転移例の13％と比較し有意に高率であった（p＜0.05）．肝転移巣でのoncFN陽性率は92％であった．stage IIIおよびIV41例におけるoncFN染色性と術後5生率は，oncFN（－）：88％，oncFN（＋）：35％，oncFN（＋＋）：25％と有意差を認めた（p＜0.01）．一方norFNの染色性は進行度，肝転移および予後とは相関がみられなかった．以上よりoncFNは癌の生物学的悪性度と関連し，大腸癌術後の予後因子として有用であると考えられた．

索引用語
immunohistological staining of colorectal cancer, oncofetal fibronectin, liver metastasis, prognostic factor

別刷請求先
中村　正人　〒589　大阪狭山市大野東377-2　近畿大学医学部第1外科

受理年月日
1993年12月8日

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