症例報告
臨床的に低カリウム血症を呈した進行癌を伴う直腸villous adenomaの2例
小林 利彦, 木村 泰三, 吉田 雅行, 櫻町 俊二, 大石 真広, 後藤 秀樹, 高林 直記, 久保田 修, 原田 幸雄, 喜納 勇*, 宇野 允之**, 宮原 透***
浜松医科大学第1外科, 同 第1病理*, 宇野外科医院**, 東京労災病院外科***
大腸のvillous adenomaにおいて,腫瘍からの大量の粘液排泄が原因で血清電解質などに異常をきたすことは極めてまれである.今回われわれは,臨床的に低カリウム血症を呈した進行癌を伴う直腸villous adenomaの2例を経験したので報告する.
症例1は89歳の女性.多量の粘液便排泄を主訴に入院した.直腸に大きさ15×7 cmの進行癌を伴う巨大villous adenomaを認め,腫瘍からの粘液排泄が原因と考えられる低カリウム血症(K3.1 mEq/l)と低蛋白血症(TP 5.5 g/dl)を呈していた.なお,排泄液の電解質組成はNa 140 mEq/l,K56 mEq/l,Cl 141 mEq/lと,カリウムの著しい高値を示した.
症例2は68歳の女性.多量の粘液性下痢と全身倦怠感を主訴に入院した.直腸に大きさ16×6 cmの進行癌を伴う巨大villous adenomaを認め,血清カリウム値は2.5 mEq/lであった.2症例とも直腸切断術が行われ,術後低カリウム血症は改善した.
索引用語
villous adnoma, depletion syndrome, hypopotassemia
別刷請求先
小林 利彦 〒431-31 浜松市半田町3600 浜松医科大学第1外科
受理年月日
1993年12月8日
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