胃癌の転移に関与した生物学的特性の解明と治療法の確立

前原　喜彦, 大城　辰雄, 大岩　久夫, 遠藤　和也, 掛地　吉弘, 折田　博之, 奥山　稔朗, 劉　啓, 大野　真司, 馬場　秀夫, 杉町　圭蔵

九州大学医学部第2外科学教室

　胃癌の転移予知に応用可能な危険因子をロジスティック判別分析で検討した．独立した危険因子として，リンパ節転移については漿膜浸潤陽性・c-erbB-2陽性・異常p53陽性・DNA high ploidy，肝転移では腹膜浸潤陽性・静脈侵襲陽性，漿膜播種では衆膜浸潤陽性・未分化型・c-erbB-2陽性があげられた，次にsuccinate dehydrogenase inhibition test（SDI法）を用いて制癌剤感受性を検討したところ，リンパ節転移巣は原発巣に比べ，検討したすべての薬剤に高感受性であったが，逆に肝転移巣では原発巣より低感受性を示した．組織型では腹膜播種をきたしやすい未分化型は分化型に比べ高感受性であった．腹膜播種の危険因子である漿膜漫潤を有する胃癌切除症例に対し，OK-432の腹腔内投与を加味した化学療法を行ったところ，治癒手術後の腹膜再発が減少し予後が向上した．以上より，転移の高危険群には，各症例の特性に基づいた化学療法（type-oriented chemotherapy）が必要と考えられる．

索引用語
gastric cancer, multivariate analysis, metastasis

別刷請求先
前原　喜彦　〒812　福岡市東区馬出3-1-1　九州大学医学部第2外科

受理年月日
1993年12月8日

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