特集
腹膜播種性転移の予知とその対策―大網乳斑に潜む微小転移と術後腹膜再発の予防―
下間 正隆, 白数 積雄, 佐久山 陽, 渡辺 典雅, 榊原 次夫, 辻本 洋行, 萩原 明郎, 山口 俊晴, 沢井 清司, 高橋 俊雄
京都府立医科大学第1外科
腹膜転移を予知するためには,転移の機序特にその初期像を知る必要がある.腹腔内のリンパ系は腹腔内のホメオスターシスを維持し,腹膜播種性転移とも密接な関係にある.大網においては,転移初期には大網のリンパ系組織である乳斑に選択的に癌細胞が転移する.肉眼的に腹膜転移陰性(P0)と判定された大網でも詳細に検討すれば,大網乳斑にmicrometastasisの潜んでいる可能性がある.
活性炭(CH)に50 mgのマイトマイシンC(MMC)を吸着させたMMC-CHの閉腹時腹腔内投与は漿膜浸潤陽性の胃癌患者の予後を改善する.これはリンパ指向性のある活性炭が腹腔内のリンパ系組織に選択的に吸収され,同部位で徐放性に高濃度のマイトマイシンCを放出し制癌効果を発揮するためであると考えられる.
腹膜播種性転移の予知とその対策には,腹膜転移と腹雄内リンパ系との関係を解明し,病態に応じたDrug Delivery Systemを工夫することが大切である.
索引用語
intraperitoneal cancer dissemination, omental milky spots, MMC absorbed activated carbon particles
別刷請求先
下間 正隆 〒602 京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465 京都府立医科大学第1外科
受理年月日
1993年12月8日
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