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第27巻 第5号 1994年5月 [目次] [全文 ( PDF 721KB)]
原著

消化器癌関連抗原の発現からみた慢性膵炎ならびに腫瘤形成性膵炎

山下 好人, 鄭 容錫, 金銅 康之, 金 光司, 乾 嗣昌, 澤田 鉄二, 仲田 文造, 西野 裕二, 奥野 匡宥, 曽和 融生

大阪市立大学医学部第1外科

 腫瘤形成性膵炎(以下,TFPと略記)と慢性膵炎を血清学的,組織学的ならびに免疫組織化学的に比較検討した.血清学的検討では,慢性膵炎,TFPともにI型糖鎖抗原の血中値が上昇する傾向が認められた.病理組織学的検討では,TFPは基本的に慢性膵炎と組織像を呈し,腫瘤形成は比軌的保たれた小葉構造と著明な小葉間の線維化によるものと考えられた.免疫組織化学的検討では,正常膵においてsialyl SSEA-1(SLX)は発現せず,carbohydrate antigen 19-9(CA19-9)は主に小葉内膵管上皮細胞管腔側に,SPan-1抗原は腺房中心細胞ならびに膵管上皮細胞管腔側にその発現を認めた.一方,慢性膵炎では,SLXは発現せず,CA19-9,SPan-1抗原の発現は増強し,TFPにおいても同様であった.以上より,TFPは独立した一疾患とは考えにくく,慢性膵炎の一病態であり,血中腫瘍マーカー値の上昇は膵液のうっ滞による血中逸脱の可能性が示唆された.

索引用語
tumor-forming pancreatitis, chronic pancreatitis, CA19-9, SPan-l antigen, sialyl SSEA-1

日消外会誌 27: 1033-1038, 1994

別刷請求先
山下 好人 〒546 大阪市阿倍野区旭町1-5-7 大阪市立大学第1外科

受理年月日
1994年1月12日

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