症例報告
同時性4重癌(多発早期胃癌,早期大腸癌,細小肝癌)の1例
権田 剛, 石田 秀行, 樋口 哲郎*, 蛭川 浩史, 中島 日出夫*, 北條 郁生, 三島 好雄*
新潟県立十日町病院外科, 東京医科歯科大学第2外科*
同時性4重癌(多発早期胃癌,早期大腸癌,細小肝癌)のまれな1例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は72歳の男性.肝硬変,食道静脈瘤,早期胃癌(胃前庭部IIa+IIc)の診断を受け紹介入院となった.術前スクリーニング検査により径約10 mmのS状結腸ポリープと肝S6に径約2 cmの腫瘤を認めた.S状結腸ポリープに対しては内視鏡的摘除術を行ったが,その組織学的検査ではcar-cinoma in adenomaであった.胃全摘術(D2),脾摘術,肝亜区域切除術を施行した.組織学的検査では,胃には前庭部病変のほかに,胃角にもIIa様病変があり,いずれも高分化型管状腺癌であった.肝腫瘤は高分化型肝細胞癌であった.4重癌ですべての癌に対し根治的治療が施行された報告例は11例認めたが,すべてが早期癌の範ちゅうに属する症例は本症例以外に認めなかった.多重癌は増加する傾向にあり,十分なスクリーニング検査が重要と考えられた.
索引用語
synchronous quadruple cancer
日消外会誌 27: 1070-1074, 1994
別刷請求先
権田 剛 〒948 十日町市大字高山32-9 県立十日町病院外科
受理年月日
1994年1月12日
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