症例報告
充実性腫瘍との鑑別が困難であった繊毛性(前腸性)肝嚢胞の1例
阿部 道雄, 加古 博史, 片渕 茂, 高野 定, 石丸 靖二*, 小川 道雄
熊本大学医学部第2外科, 同 附属病院病理部*
症例は57歳の男性.前庭部小彎のIIc型早期胃癌の診断をうけ,手術目的にて当科に入院.術前検査として施行したultrasonography(US)にて,肝S4区域に大きさ19×14 mmの嚢胞性病変を認め,その内腔に嚢胞壁から隆起した充実性腫瘍を思わせるechogenic massを認めた.Computerized tomography(CT)では病巣はlow density areaを呈し,充実性腫瘍像は描出されなかった.早期胃癌に合併した肝嚢胞腺腫(腺癌)の疑いを否定できず,手術を施行した.術中USでもより明瞭なechogenicmassを認めたため,胃切除と同時に核出術を施行した.摘出標本は単房性嚢胞で,内容は灰白色粘稠な液体であり,隆起性病変は認めなかった.病理学的検索にて繊毛性(前腸性)肝嚢胞と診断された.本疾患はまれな疾患であるが,US検査でechogenic massを呈する傾向があり,充実性腫瘍との鑑別診断上重要であると思われた.
索引用語
hepatic cyst, ciliated foregut cyst, early gastric cancer
日消外会誌 27: 1080-1084, 1994
別刷請求先
加古 博史 〒860 熊本市本荘1-1-1 熊本大学医学部第2外科
受理年月日
1993年12月8日
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